プロジェクターは長年、大画面表示の主流として利用されてきました。特にシアタールームやプレゼンテーション用途では多くの実績がありますが、コントラストという観点で見ると、プロジェクターにはいくつかの弱点があります。
プロジェクターの仕組みと、2つのコントラストについて解説します。
プロジェクターの仕組み
プロジェクターは、内部の光源から発せられた光をレンズ系を通してスクリーンや壁面に投影する仕組みです。この投影方式には、映像品質に影響する根本的な特徴があります。
まず、プロジェクターは外光や環境光の影響を受けやすい構造です。投影された映像は、スクリーンに反射してから人の目に届くため、周囲の明るさによって見え方が大きく左右されます。これは、映画館が暗転する理由の一つでもあります(没入感を高める等の理由もあります)。
また、プロジェクターは、「完全な黒」を表現できません。投影方式の特性上、黒を表示する際も微量の光が放射されるため、真っ黒ではなく暗いグレーのような状態になります。
さらに、会議室の照明を点けたまま、または日中の自然光が入る環境でプロジェクターを使用するなど明るい環境では、映像全体が白っぽくぼんやりとした印象になり、文字が読みにくくなったり、色が薄く見えたりします。
プロジェクターにおける2つのコントラスト
プロジェクターのコントラスト比には、「ダイナミックコントラスト」と「ネイティブコントラスト」の2種類があり、これらは測定方法に違いがあります。
ネイティブコントラスト比
ネイティブコントラスト比は、レンズの絞り機能などの調節を加えない状態でのコントラスト比です。これはプロジェクター本来のコントラスト性能を示す数値です。
ダイナミックコントラスト比
ダイナミックコントラスト比とは、レンズ部に明るさの絞り機構をつけ、シーンに応じて光量を自動調整することでコントラスト比を向上させた数値です。
明るいシーンでは絞りを開けて光量を増やし、暗いシーンでは絞りを閉めて光量を減らすことで、理論上は非常に高いコントラスト比を実現します。
しかし、ダイナミックコントラストで表されたコントラスト比は、本来のコントラスト比である「ネイティブコントラスト」とは条件が異なるので、この2つを単純に比較はできません。非常に高い数値に見えても、実際には同じ数値ではないので注意が必要です。
実際の仕様欄でも「ダイナミックコントラスト」で記載されているケースがよくあるため、必ず「ネイティブコントラスト比」で判断することが重要です。
