実際にMAAJESTICを開発するうえでは、さまざま課題や苦労、そしてこだわりがあったそうです。
香りをどう伝えるか?プロジェクトを進めていく中で見つけた4つの課題
プロジェクトを進めていくなかで4つの課題が見つかり、その解決に向けた取り組みについて平子氏と新田目氏は以下のように述べています。
4つの課題は、下記のとおりです。
それぞれ詳しく紹介します。
課題1:香りは音や映像より伝わるのが遅い
音や映像に合った香りを届けようとしても、香りが届くまでの時間が音や映像に比べて遅く、タイミングにズレが生じてしまう課題がありました。対策として、香りを電子制御し、音や映像と同時に届けられるよう工夫しました。
課題2:香りの種類と豊富さ
単にアイスクリームの香りや薔薇の香りといっても、その種類や産地によって大きく異なり、種類が豊富にあり、選定が難しかったです。どのような香りが求められているかということや、どのように表現したいかなどを、長い議論を通じて選定していきました。映像を見たときに、その映像への没入感を高める香りを選定することでまとまりました。
課題3:香りの種類によって特徴が違う
前の課題と重なる部分もありますが、香りの広がり方の違いにも頭を悩まされました。先述のように香りの種類は非常に多く存在します。それぞれ、香りが単純に異なるというだけではなく、広がり方や速さも異なるなかで、各香りの特徴を踏まえて選定を進めました。香りの特徴によって噴出する時間を調整することで、最適量を最適なタイミングで届けることができるようになりました。
課題4:香りを人のどの部分に届けるか
受け取る人の身長によっても香りの届き方や印象が変わることが分かったため、最適な場所を試しながら施策を進めていきました。実際には、ひとりが装置の裏側で香りの噴出口を調節し、もうひとりが体験者の側に立って口頭で「もう少し上」などとフィードバックを伝えながら地道に調整を続けました。
このような課題をクリアすることで、映像に合わせた香りが最適なタイミングでお客様に届けることが可能になったと語ります。
平子氏は「こうしたさまざまな課題が見つかり大変でしたが、新田目さんとの二人三脚だからこそプロジェクトが加速し、深化できました」と振り返りました。
「香り×非接触」MAAJESTICのこだわりポイント
平子氏はMAAJESTICのこだわりポイントとして、人間の
五感のうち視覚(映像)・聴覚(音)・嗅覚(香り)の3つを占有しており、それらを適切なタイミングで届けられることを挙げています。香りが必要以上に長く漂わず、次に出てくる香りの邪魔をしない工夫をしていることもポイントの一つです。
加えて、新しい生活様式に配慮した非接触型の製品を開発できた点も強みだといいます。企画自体はコロナ禍以前から行っていたものの、プロジェクト進行中に新型コロナウイルスが流行しました。MAAJESTICは画面に触れる必要が無く、手をかざすだけで操作できるため、新しい生活様式に対応できていると言えます。
実際に操作している動画がございますので、こちらもご覧ください。
新田目氏がこだわりポイントとして挙げるのが、ソフトもハードもHIBINOグループのみで実現できる点です。
トータルソリューションとして提供しているため、どんなアプローチにも柔軟に対応できます。たとえば香りに合わせて音や映像を作ることや、反対に音と映像に沿って香りを作ることも可能であるといいます。
プロモーションや映像資料として活躍が期待できるMAAJESTIC
MAAJESTICについて平子氏と新田目氏は、「日常的な空間で非日常感を味わえるものが作れた」と胸を張ります。これまでも五感に影響を及ぼす映像や音はあったものの、要素として香りを取り入れたものはMAAJESTICが初めてであったため、大きな反響がありました。
実用例としては、ショッピングモールなどの設置を想定しており、レストラン街でイタリア風の音楽と映像、そしてイタリア料理を連想するような香りを流し、来場者に訴求することができます。またプロモーションだけでなく、博物館や展示イベントなどにおける映像資料としても活躍できるのではないかと期待を寄せています。